認知症の治療

認知症治療の現状




アルツハイマー病の原因
現在、アルツハイマー病の原因は解明されていませんが、仮説として有力なのが、アミロイドβタンパク質が脳内に蓄積していく過程で神経細の死滅を引き起こすというものです。正常な脳ではアミロイドβは新陳代謝して蓄積しませんが、なんらかの原因でアミロイドβが蓄積すると、それが老人斑となり、神経細胞を殺してしまい認知症のもとになると考えられています。ただ、老人斑がなくても発症するケースもあります。

アルツハイマー病の治療薬
病気の原因に直接働きかける治療薬はまだありません。一般的にコリンエステラーゼ阻害剤である、塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)などが使われています。この薬はアセチルコリンという神経伝達物質を増やす作用を持っており、アルツハイマー病で減ったアセチルコリンを増やします。しかし、これは記憶障害を治すものではなく、注意力や集中力を高めることで、認知機能全般の改善を助けるものです。塩酸ドネペジルはアルツハイマー病以上にレビー小体型認知症に有効という意見もある。


主なアルツハイマー病対症治療薬
クスリ・塩酸ドネペジル(コリンエステラーゼ阻害剤)
・ガランタミン(コリンエステラーゼ阻害剤)
・リバスチグミン(コリンエステラーゼ阻害剤)
・メマンチン(NMDA 受容体拮抗剤)



塩酸ドネペジル(商品名アリセプト)
日本で開発された薬。副作用も少なく、軽度~重度のあらゆるアルツハイマー病に有効となっている。

ガランタミン(商品名レミニール)
主に欧米で用いられている薬。認知・身体機能への有効性の他、精神症状や行動異常にも効果があるとされている。

リバスチグミン(商品名エクセロン)
主に欧米で用いられている薬。軽度から中等度のアルツハイマー病に有効。吐き気などの副作用が出やすいが、カプセル剤の他にパッチ剤(皮膚に貼りつける)があるので、それを用いることで軽減できる。

メマンチン(商品名メマリー)
中等度及び高度のアルツハイマー型認知症に適応をもち、コリンエステラーゼ阻害剤と併用することができる。


根本的な治療薬はないが、早期の治療が大切
正常圧水頭症などに起因する治療可能な認知症もありますが、患者の約半数を占めるアルツハイマー型認知症には、根本的な治療薬・治療方法はなく、あくまで対症療法になります。しかし、塩酸ドネペジルなどを使うことで、病気の進行を遅らせ(完全にとめることはできない)症状を改善することができます。このことから、できるだけ症状の軽いうちに使い始めることが必要です。

将来的には予防や根本的な治療法となる研究が進んでいる
2013年3月18日、理化学研究所・長崎大学などが、アルツハイマー病の遺伝子治療実験に成功というニュースがありました。

アルツハイマー病は、脳に異常なタンパク質(アミロイドβ)が蓄積して発症するとされていますが、このタンパク質を分解する酵素(ネプリライシン)を作る遺伝子を特殊なウイルスを使い、アルツハイマー病のマウスの血管に注射したところ、記憶や学習能力が健康なマウスと同じレベルにまで回復しました。将来的には、注射一本でアルツハイマー病を予防したり、治療できるようになる可能性も出てきました。



ナビゲーション